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六十四卦の概要 火澤睽

三十八火澤睽(かたくけい) ☲ ☱

 人間関係が最も良好な風火家人☴☲がひっくり返ると、人間関係が最もギズギスする火澤睽☲☱の時となる。まるで今の日本社会のようである。高度経済成長から安定成長期にかけて、温かく幸せそうな家庭が多かった。祖父母と両親、子供が一緒に暮らす大家族も健在で、力を合わせて仲良く暮らしている家族が多かったように思う。家族や家庭だけでなく、会社も家族のような人間関係で成り立っており企業家族と呼ばれていた。昭和三十年ころから平成が始まるころまでは、家庭も企業も風火家人の良好な人間関係が成り立っていたように思う。ところが、経済の成長が止まり、家族や企業の在り方など世の中の仕組みがおかしな方向に変わって行くようになると、風火家人の時がひっくり返り火澤睽の時に陥ってしまったように思う。
 卦象で見ると、上卦離☲の火は上に昇り、下卦兌☱の澤の水は下に降る。上の者と下の者が反対を向いて、背き合っている。
 家庭に当て嵌めると、両親と子供たちの考え方が反対を向いて背き合っている。企業に当て嵌めると役員と従業員の考え方や価値観が反対を向いて背き合っている。国家に当て嵌めると政府が進める政策と国民の望む政策が反対を向いて背き合っている。
 楽しそうで温かく幸せそうだった風火家人の時の組織風土とは正反対に辛そうで冷たく不幸せそうな組織風土である。
 家庭においては、家族はバラバラになって、両親も子供たちも自分のことしか考えなくなる。家族の人間関係は悪化して、時には家族間で犯罪が起こる。
 企業においては、役員は従業員を慮(おもんぱか)ることなく、役員や株主の利益ばかりを追求する。従業員の給料は上がらず人間関係も悪化して、みんな自分のことを優先するので組織の一体感が失われる。人間関係の悪化により会社の売上は低迷して、利益を確保するため、正社員を削減し派遣社員で対応するので、ますます人間関係は悪くなり、辞めていく人が後を絶たない。
 国家においては、政府は国民が貧しくなり生活が苦しくなっていることに目を向けず予算を確保するために増税や社会保険料の引き上げなどの無慈悲な政策を進める。国民は国家への帰属心を失い国民が苦しんでいることに目を向けようとしない政府や政治家に愛想を尽かして、政治への関心を失い選挙に行かなくなる。
 家庭も企業も国家も火澤睽の時に陥ると、組織の一体感を失い人間関係が悪化して、多くの人が不幸になる。

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