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四季と易経 その五十八

禾乃登(こくものすなわちみのる)(七十二候の四十二候・処暑の末候)

【新暦九月二日ころから六日ころまで】
 意味は「(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 

 「禾乃登(こくものすなわちみのる)」は、易経・陰陽消長卦の「天地否」六三に中る。次に「天地否」六三の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天地否」六三の言葉は【新暦九月二日ころから六日ころまで】に当て嵌まる。

天地否六三(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六三。包羞。
○六三。羞(はじ)を包(つつ)む。
 六三は才德乏しく悪の道を妄進する非(ひ)道(どう)の小人。世の中が乱れ崩壊に向っていく否中の否は去ったが、悪の道に耽溺して、いつも心の中で悪事を企んでいる。
 否の時の今は威勢がよくても、泰の時が到来すれば追放されるしかない。六三にできることは自分の不善を恥じて悪事を蔽(おお)い隠すことしかない。

《小象伝》
象曰、包羞、位不當也。
○象に曰く、羞を包むとは、位當らざれば也。
 小象伝は次のように言っている。六三にできることは自分の不善を恥じて悪事を蔽(おお)い隠すことしかない。才德乏しく妄進する非(ひ)道(どう)の小人(陰柔不中正)六三は、泰の時が到来したら就くべき地位がないのである。

 「天地否」六三の之卦は「天山遯」である。次に「天山遯」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「天山遯」九三の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天地否」の六三と同じく【新暦九月二日ころから六日ころまで】に当て嵌まる。

天山遯(天地否六三の之卦)

《卦辞・彖辞》
遯、亨。小利貞。
○遯(とん)は亨(とお)る。小は貞(ただ)しきに利(よろ)し。
 遯(とん)は陰(小(しよう)人(じん)・衰運・悪)の勢いがだんだん盛んになって、最早その勢いを抑制することができない時である。陽(盛運・善)の君子は隠(いん)遁(とん)して道を全うするしかない。
 大きな事業に取り組んではならない。小さな事業に取り組む場合は、正しい道(道德)を固く守れば(小人の害悪に影響されなければ)、事をうまく運ぶことができる。

《彖伝》
彖曰、遯亨、遯而亨也。剛當位而應、與時行也。小利貞、浸而長也。遯之時義、大矣哉。
○彖に曰く、遯は亨るとは、遯(のが)れて而(しか)して亨る也。剛、位に當(あた)たりて應(おう)じ、時と與(とも)に行う也。小は貞(ただ)しきに利(よろ)しとは、浸(ようや)くにして長ずれば也。遯の時(じ)義(ぎ)大なる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。陰(小(しよう)人(じん)・衰運・悪)の勢いがだんだん盛んになっていく遯の時に中り、陽(盛運・善)の君子は隠(いん)遁(とん)して道を全うするしかない。小人が跋(ばつ)扈(こ)する世の中から隠遁して人の道(道德)を全うするのである。
 陽剛九五と陰柔六二は中正にして相応じ、陰(小(しよう)人(じん)・衰運・悪)の害悪から遁(のが)れるべき時は遁れ、遁れるべきでない時は正しい道(道德)を固く守る。
 小さな事業に取り組む場合は、正しい道(道德)を固く守れば(小人の害悪に影響されなければ)、事をうまく運ぶことができる。小人の勢力が漸(ぜん)次(じ)に大きくなるので、大きな事業に取り組んではならない。小人が跋(ばつ)扈(こ)する世の中から隠遁して人の道(道德)を全うするのである。小人が跋(ばつ)扈(こ)する遯の時は、君子にとって大きな意義がある。

《大象伝》
象曰、天下有山遯。君子以遠小人、不惡而嚴。
○象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡(にく)まずして嚴(げん)にす。
 大象伝は次のように言っている。乾(天)の下に艮(山)が有るのが遯の形である。下から見ると山の頂上は天のように見えるが、山頂に登ると天は遙(はる)か彼(か)方(なた)に遠ざかる。
 君子はこの(下から見ると山の頂上は天のように見えるが、山頂に登ると天は遙(はる)か彼(か)方(なた)に遠ざかる)形に見習って、小人を悪(にく)まずして自らを律し(人の道=道德を全うし)て、その威厳によって小人を自然と遠ざける(近づけない)のである。

天山遯九三(天地否六三の之卦・爻辞)

《爻辞》
九三。繋遯。有疾厲。臣畜妾吉。
○九三。遯(とん)を繋(つな)ぐ。疾(やまい)有り。厲(あやう)し。臣(しん)妾(しよう)を畜(やしな)えば吉(きつ)。
 剛健正位の九三は一緒に隠遁すべき正応上九に見向かれない(共に陽な)ので、陽剛相親しむ六二の小人に後ろ髪を引かれる。遁れ去るべきなのに遁れ去れないのは病気に罹ったようなものだが、其(そ)の位(くらい)に恋(れん)々(れん)とする己の心を後ろ髪を引かれると称して誤魔化している。実に危ない状況に置かれている。小人に後ろ髪を引かれるような恩情で下男下女を相手にしつつ、近づけることなく、遠ざけることなく、適当な距離を置いて接する限りにおいては、小人の害悪を受けることなく、うまく事が運ぶことができるであろう。

《小象伝》
象曰、繋遯之厲、有疾憊也。畜臣妾吉、不可大事也。
○象に曰く、繋(けい)遯(とん)の厲(あやう)きは、疾(やまい)有りて憊(つか)るる也(なり)。臣(しん)妾(しよう)を畜(やしな)えば吉とは、大事に可(か)ならざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九三が危ない立場にあるのは、六二の小人に後ろ髪を引かれると称して其(そ)の位(くらい)に恋々としている己の心を誤魔化しているうちに、隠遁を果(か)断(だん)決行する気力を失ってしまったからである。小人に後ろ髪を引かれるような恩情で下男下女を相手にしつつ、近づけることなく、遠ざけることなく、適当な距離を置いて接する限りにおいては、小人の害悪を受けることなく、うまく事が運ぶことができるかもしれないが、大事業を成し遂げることはできないのである。

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