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四季と易経 その五十四

寒蝉鳴(ひぐらしなく)(七十二候の三十八候・立秋の次候)

【新暦八月十二日ころから十六日ころまで】
 意味は「ヒグラシが鳴き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 「カナカナカナ…」という、ヒグラシの鳴き声が耳に届くころ。「寒蝉(かんせん)」とは秋に鳴く蝉のことをいい、ヒグラシのほか、ツクツクボウシを指すこともあります。

 「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」は、易経・陰陽消長卦の「天山遯」九五に中る。次に「天山遯」九五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天山遯」九五の言葉は【新暦八月十二日ころから十六日ころまで】に当て嵌まる。

天山遯九五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九五。嘉遯。貞吉。
○九五。嘉(よ)く遯(のが)る。貞(てい)にして吉(きつ)。
 剛健中正の九五は遁れ退く時のトップとして柔順中正の六二と相応じている。小人の勢いがどんどん伸びて君子が隠遁を余儀なくされる遯の時に中(あた)り、六二と力を合わせて人事を尽くし、天命に順って、嘉(よ)く(美しく)隠遁するのである。
 その隠遁の仕方は正しく、遁れ退く遯の時(じ)宜(ぎ)に適(かな)っているので、吉祥を招き寄せる。

《小象伝》
象曰、嘉遯、貞吉、以正志也。
○象に曰く、嘉(よ)く遯(のが)る。貞(てい)にして吉(きつ)とは、志を正しくする也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九五の隠(いん)遁(とん)の仕方は正しく遯の時(じ)宜(ぎ)に適(かな)っているのは、小人が跋扈する遯の時に処するに、中正の德を以て正しい志を貫(つらぬ)くからである。

 「天山遯」九五の之卦は「火山旅」である。次に「火山旅」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「火山旅」の六五の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天山遯」の九五と同じく【新暦八月十二日ころから十六日ころまで】に当て嵌まる。

火山旅(天風姤九五の之卦)

《卦辞・彖辞》
旅、小亨。旅貞吉。
○旅(りよ)は小(すこ)しく亨(とお)る。旅は貞(ただ)しければ吉。
 旅(りよ)は旅(たび)する時。旅を広く捉えれば、長期出張や単身赴任等も一種の旅である。
 旅は火(上卦離)が山(下卦艮)の上に在る。山(宿に例える)は動かず火(旅人に例える)は燃え移るので旅に例えて物語はできている。旅人は見知らぬ土地を旅するので何事にも慎重である。すなわち、止まるべき所に止まり(下卦艮)、明智(上卦離)で適切に対処しようとする。それゆえ、小さな事なら成就する。旅人が旅の時の正しい道(止まるべき所に止まること)を固く守れば、幸運を招き寄せることができる。

《彖伝》
彖曰、旅小亨。柔得中乎外、而順乎剛、止而麗乎明。是以小亨。旅貞吉也。旅之時義大矣哉。
○彖に曰く、旅は小しく亨る。柔、中を外に得て、剛に順ひ、止まりて明に麗(つ)く。是(ここ)を以て小(すこ)しく亨る。旅は貞にして吉也。旅の時(じ)義(ぎ)大いなる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。旅の時は止まるべき所に止(とど)まり(下卦艮)、明智(上卦離)で適切に対処しようとする。それゆえ、小さな事なら成就する。
 柔順で中を得た旅人六五が外卦に居て剛健の上九と九四に順っている。六五は何事にも慎重で止まるべき所に止まり(下卦艮)、明智(上卦離)で省察して適切に対処しようとしている。それゆえ、小さな事なら成就するのである。旅の時の正しい道(止まるべき所に止まること)を固く守れば幸運を招き寄せることができる。旅の時の意義(止まるべき所に止まり明智で省察して適切に対処する)は何と重大なことであろうか。

《大象伝》
象曰、山上有火旅。君子以明愼用刑、而不留獄。
○象に曰く、山の上に火有るは旅(りよ)なり。君子以(もつ)て明らかに愼(つつし)みて刑を用ひ、而(しか)して獄(ごく)を留(とど)めず。
 大象伝は次のように言っている。泰然と止まり妄動しない山(下卦艮)の上に、明るく速く燃え移る火(上卦離)が有るのが旅の形である。
 君子はこの形を見習って、明智・明德で罪の軽重を見定め、慎重に刑を確定して、速やかに判決・執行する。すなわち、見知らぬ土地を旅する旅人は、その時々において、明智・明德で止まるべきか動きべきかを見定め、慎重に決断して、速やか且つ適切に対処するのである。

火山旅六五(天山遯九五の之卦・爻辞)

《爻辞》
六五。射雉一矢亡。終以譽命。
○六五。雉(きじ)を射て一(いつ)矢(し)亡(うしな)ふ。終に以て譽(よ)命(めい)あり。
 六五は柔順にして中庸の德と明智・明德・文明(上卦離)の德を具えた理想的な旅人である。旅先の国の天子(トップ)に直接仕えようと思い、雉(きじ)を献上するために矢を射たが、的が外れて矢を失ってしまった。それゆえ、天子(トップ)に直接仕えることはできない。
 しかし、終に六五の才能と道德性が認められた。旅先で官職(公的な役職)に任用されて旅先の国に定住することになった。六五は旅先において大いなる名譽を得たのである。

《小象伝》
象曰、終以譽命、上逮也。
○象に曰く、終に以て譽命ありとは、上(かみ)逮(およ)ぶ也。
 小象伝は次のように言っている。六五は旅先において官職に任用され、大いなる名誉を得た。六五の至誠の心が旅先の国の天子(トップ)に通じたのである。

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