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四季と易経 その五十

桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)(七十二候の三十四候・大暑の初候)

【新暦七月二十二日ころから二十六日ころまで】
 意味は「桐の実がなり始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 鷹が舞う青空の下、蓮の花びらが散って、桐が実をつけ始めます。桐は古来より神聖な木とされました。五百円玉の表に描かれているのも桐の花と葉。内閣総理大臣の紋章にもなっています。。

 「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」は、易経・陰陽消長卦の「天山遯」初六に中る。次に「天山遯」初六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天山遯」初六の言葉は【新暦七月二十二日ころから二十六日ころまで】に当て嵌まる。

天山遯初六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
初六。遯尾。厲。勿用有攸往。
○初六。遯(のが)るるの尾(しりえ)なり。厲(あやう)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに用(もち)ふる勿(なか)れ。
 初六は陰柔不中正(陰爻陽位)。遯は遁(のが)れ退(しりぞ)く道を説いているのだが、初六は最後尾に居るので、逃げ遅れて置き去りにされた。実に危うい状況である。
 ところが、初六は位(くらい)賤(いや)しく能力乏しいので、誰も見向いてくれない。こうなったら、今さらバタバタと遁れ去るよりも、じっと隠れて動かないほうがよい。

《小象伝》
象曰、遯尾之厲、不往何災也。
○象に曰く、遯(とん)尾(び)の厲(あやう)きは、往(ゆ)かずんば何の災(わざわい)あらん也(や)。
 小象伝は次のように言っている。初六は遁れ退く時の最後尾に居るので、逃げ遅れて置き去りにされた。実に危うい状況だが、誰も見向いてくれない。
 このような状況に置かれて、どうして災(わざわい)いを招き寄せることがあろうか。

 「天山遯」初六の之卦は「天火同人」である。次に「天火同人」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「天火同人」の初九の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天山遯」の初六と同じく【新暦七月二十日日ころから二十六日ころまで】に当て嵌まる。

天火同人(天山遯初六の之卦)

《卦辞・彖辞》
同人、于野。亨。利渉大川。利君子貞。
○人に同じうするに野(や)に于(おい)てす。亨(とお)る。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利(よろ)し。君子の貞(てい)に利(よろ)し。
 同人は人と人とが志を同じくして、一致団結して事に中る時。上卦の天(乾)と下卦の太陽(離)が天の道を同じくするように、広く天下の同志を集めて和合すべき時である。貴方が公正で無私ならば、何事もすらっと通る。
 同志が一致団結して事に中る場合は、大川を渉るような難事業でも成し遂げることができる。何事も君子の正しい道を固く守ることが肝要である。

《彖伝》
彖曰、同人、柔得位、得中、而應乎乾、曰同人。同人曰、同人于野、亨。利渉大川、乾行也。文明以健、中正而應、君子正也。唯君子爲能通天下之志。
○彖に曰く、同人は、柔、位(くらい)を得、中を得て乾(けん)に應(おう)ずるを、同人と曰(い)う。同人に曰(いわ)く、人に同じくするに野(や)に于(おい)てす。亨(とお)る。大(たい)川(せん)を渉るに利しとは、乾の行(ぎよう)也。文明にして以て健(けん)、中正にして應(おう)ず、君子の正しき也。唯(た)だ君子のみ能(よ)く天下の志を通ずと爲(な)す。
 彖伝は次のように言っている。同人は柔順な六二が正(せい)中(ちゆう)(正位にして中庸の德を具えている)を得て、剛健(正位にして中庸の德を具えている)九五と志を同じうする時だから「同人」と言う。「同人は人と人とが志を同じくして、一致団結して事に中る時。上卦の天(乾)と下卦の太陽(離)が天の道を同じくするように、広く天下の同志を集めて和合すべき時である。貴方が公正で無私ならば、何事もすらっと通る。同志が一致団結して事に中る場合は、大川を渉るような難事業でも成し遂げることができる。何事も君子の正しい道を固く守ることが肝要である」とは、正(まさ)しく上卦乾(天)の働きである。
 内(下卦離)に文明の德を備え、外(上卦乾)は剛健の性質で、六二と九五が共に中(ちゆう)正(せい)(正位にして中庸の德を具えている)で応じている。六二の忠臣(部下)と九五の天子(トップ)が中(ちゆう)正(せい)の道を以て相応じている。正(まさ)しく、君子の正しい道である。このような君子だけが、天下の臣民(世の中のあらゆる人々)と志を通じて、大同団結できるのである。

《大象伝》
象曰、天與火同人。君子以類族辨物。
○象に曰く、天と火とは同人なり。君子以て族を類し物を辨(べん)ず。
 小象伝は次のように言っている。上卦乾の天と下卦離の火(太陽)は共に上に昇っていくから志を同じうすることができるのである。
 君子は天と火(太陽)の性質に倣って、善(ぜん)悪(あく)正(せい)邪(じや)智(ち)愚(ぐ)利(り)鈍(どん)(善きものと悪しきもの、正しいものと邪なもの、智恵ある人と愚鈍な人、鋭い人と鈍い人)を分類して臣民のタイプを見極め、あらゆる物事を弁(べん)別(べつ)して、正しく時に対処するのである。

天火同人初九(天山遯初六の之卦・爻辞)

《爻辞》
初九。同人于門。无咎。
○初九。人に同じくするに門に于(おい)てす。咎(とが)无(な)し。
 初九は人と人とが志を同じくして、一致団結して事に中る同人の時の初めに居て、天下の人と和合すべく家の門から出て六二と志を同じくする。初九には私心がなく、公正なので咎(とが)められることはない。

《小象伝》
象曰、出門同人、又誰咎也。
○象に曰く、門を出(い)でて人に同じくす。又誰か咎(とが)めん也(や)。
 小象伝は次のように言っている。私心がなく公正な初九は、家の門を出て(私心を捨てて)六二を始め広く天下の人と和合しようとしているのである。
 誰が初九を咎めることができようか。

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