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四季と易経 その十三

魚上氷(うおこおりにのぼる)(七十二候の三候・立春の末候)

【新暦二月十四日ころから十八日ころまで】
 意味は「氷の間から魚が動き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 川や湖の水が温み、割れた氷の間から魚が飛び跳ねる時季。

 「魚上氷(うおこおりにのぼる)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)澤(たく)臨(りん)」上六に中る。次に「地澤臨」上六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地澤臨」上六の言葉は【新暦二月十四日ころから十八日ころまで】に当て嵌まる。

地澤臨上六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○上六。敦(とん)臨(りん)す。吉。咎无し。
 上六の老師は柔順正位で臨(上卦坤)の極点に居る。六五の天子(トップ)の德風に包まれて下々に篤(とく)実(じつ)に臨(のぞ)み、民(たみ)を思いやること窮(きわ)まりなく、民を包容して安んずること限りない。それゆえ、宜しくして、咎められるようなことは何もない。
《小象伝》
○象に曰く、敦(とん)臨(りん)の吉は、志(こころざし)内(うち)に在(あ)る也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。上六の老師が宜しくして、咎められるようなことは何もないのは、六五の君主の補佐役として国政の安定を強く願っているからである。

 「地澤臨」上六の之卦は「山澤損」である。次に「山澤損」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「山澤損」上九の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地澤臨」上六と同じく【新暦二月十四日ころから十八日ころまで】に当て嵌まる。

山澤損(地澤臨上六の之卦)

《卦辞・彖辞》
○損(そん)は孚(まこと)有り。元(げん)吉(きつ)。咎(とが)无(な)し。貞(てい)にす可(べ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。曷(なに)をか之(これ)用(もち)ひん。二(に)簋(き)、用(もつ)て亨(とお)す可(べ)し。
 損は下(内)を減らして上(外)を増やす(上司に贈り物をしたり、政府が増税したりする)時。真心があれば大いに宜しきを得て、幸運を招き寄せる。人から咎められることもない。正しい道(道德)を固く守れば大きな事を進めても宜しい。下(内)を減らして上(外)を増やす損の時に神仏をお祀りするのは、どのようにしたらよいのだろうか。
 損の時にはいつもよりも質素なお供え物であっても、貴方に真心があれば、神様仏様はその真心を快く受け入れてくださるであろう。
《彖伝》
○彖に曰く、損は下を損して上を益し、其(そ)の道上り行く。損して孚(まこと)有り。元吉。咎(とが)无(な)し。貞(てい)にす可(べ)し。往く攸(ところ)有るに利し。曷(なに)をか之(これ)用(もち)ひん。二(に)簋(き)用(もつ)て亨(とお)す可し。二(に)簋(き)は應(まさ)に時有るべし。剛を損して柔を益すには時有り。損益盈(えい)虚(きよ)、時と偕(とも)に行う。
 彖伝は次のように言っている。損(そん)は下卦兌(内)を減らして上卦艮(外)を増やす(上司に贈り物をしたり、増税したりする)道を説(と)く。
 地天泰の下卦乾の上爻が上卦坤の上爻に上(のぼ)り、坤の上爻が乾の上爻に下(くだ)る。内を減らして外を増やして地天泰の象が山沢損の象になったのである。真心をもって下(内)を減らせば、大いに宜しきを得て、幸運を招き寄せる。人から咎められることもない。
 正しい道(道德)を固く守れば大きな事を進めても宜しい。下(内)を減らして上(外)を増やす損の時に神仏をお祀りするのは、どのようにしたらよいのだろうか。損の時には粗末なお供え物でも貴方に真心があれば、神様仏様は貴方の真心を快く受け入れてくださる。いつも質素なお供え物でよいわけではない。しかるべき時(下を減らし上を増やす損の時)だから質素にするのである。剛陽(行き過ぎた物・乾の上爻)を減らして、柔陰(足りない物・坤の上爻)を増やすのも、しかるべき時だからそのようにしたのである。
 減らしたり増やしたり、充実させたり空(くう)虚(きよ)にしたりするのは、すべて、しかるべき時だからそのようにするのである。
《大象伝》
○象に曰く、山の下に澤有るは損なり。君子以て忿(いかり)を懲(こ)らし欲を塞(ふさ)ぐ。
 大象伝は次のように言っている。山の下に澤が有るのが損の形である。澤は潤いを減らして山に潤いを与え、水中の土を減らして山に土を盛り付ける。己を減らして他を益するのである。君子はこの形を見習って、忿(ふん)怒(ど)の心(乾の卦德)を戒(いまし)め(て兌の悦びとなり)、欲望の心(坤の卦德)を塞(ふさ)いで(艮の抑制となった)、己の人間性を磨くが宜しい。

山澤損上九(地澤臨上六の之卦・爻辞)

《爻辞》
○上九。損せずして之(これ)を益す。咎无し。貞(てい)にして吉。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。臣(しん)を得て家(いえ)无(な)し。
 上九は下(内)を減らして上(外)を増やす(上司に贈り物をしたり、増税したりする)損の時の卦極に居(い)る。損が窮(きわ)まり変化する時である。そこで、下を減らすことなく増やすことを図り、善政を施(ほどこ)し下々を益する。下々はこれを歓迎して、誰も上九を咎(とが)めない。正しい道(道德)を固く守れば宜しきを得て幸福を招き寄せる。
 大きな事業を進めても宜しい。上九は下々の信服を得て、下々には自分の家のことよりも公を優先する気風が生まれる。
《小象伝》
○象に曰く、損せずして之(これ)を益すとは、大いに志を得る也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。上九は下を減らすことなく増やすことを図る。善政を施(ほどこ)し下々を益して、下々の信服を得る。人の上に立つ者として大いに志を成し遂げる。
(四季と易経 その十三)

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