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四季と易経 その五

小(しよう)寒(かん)(二十四節氣の二十三節氣)

【新暦一月五日ころから十九日ころまで】
 「冬至」の次の二十四節氣は「小寒」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 「小寒」から「寒の入り」となります。「小寒」と「大寒」を合わせた節分までの三十日間が「寒の内」。一年で最も寒い時季にあたる寒の内に出すのが、寒中見舞いです。

芹乃栄(せりすなわちさかう)(七十二候の六十七候)

【新暦一月五日ころから九日ころまで】
 意味は「芹が盛んに生育する(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 冷たい沢の水辺で、芹が盛んに生えるころ。芹の語源は、競り合うように群生することに由来します。

 「芹乃栄(せりすなわちさかう)」は、易経・陰陽消長卦の「地雷復」六(りく)四(し)に中る。次に地雷復六四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地雷復」六四の言葉は【新暦一月五日ころから九日ころまで】に当て嵌まる。

地雷復六四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六四。中(ちゆう)行(こう)にして獨(ひと)り復(かえ)る。
 六四は柔順正位で賢人初九と応じている。衆陰の真ん中(上六・六五・六四・六三・六二)に居(い)ながら、唯一、賢人初九と応じる関係に在るので、初九を師と崇めて陰(いん)邪(じや)の誘惑を断ち切り、賢人初九の指導を仰いで正しい道に復(かえ)る(道德心を取り戻す)のである。
《小象伝》
○象に曰く、中行にして獨(ひと)り復(かえ)るは、以(もつ)て道に從(したが)う也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六四は唯一、賢人初九と応じる関係に在るので、独り初九の指導を仰いで正しい道に復る(道德心を取り戻す)。
 賢人初九を師と崇めて陰(いん)邪(じや)の誘惑を断ち切り、初九の指導に従って正しい道(仁義礼智信の五常の道)を歩むのである。

「地雷復」四爻の之卦は「震(しん)為(い)雷(らい)」である。次に「震為雷」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「震為雷」九(きゆう)四(し)の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地雷復」の六四と同じく【新暦一月五日ころから九日ころまで】に当て嵌まる。

震(しん)為(い)雷(らい)(地雷復六四の之卦)

《卦辞・彖辞》
○震は亨る。震來(きた)るとき虩(げき)虩(げき)たり。笑(しよう)言(げん)啞(あく)啞(あく)たり。震、百里を驚かせども、匕(ひ)鬯(ちよう)を喪(うしな)はず。
 震爲雷は抑圧されていた陽氣が盛んに活動を始め、勢力を拡大伸張する時。陽氣が次から次に発動して、萬物は生々化育する。雷が轟(とどろ)き渡るような大事変が起こった時は、恐れ慎み自ら反省し、正しい道を修めて人德を養い、事変に適切に対処するのである。事変に適切に対処すれば、やがて事変は落ち着いて、人々は談笑して和らぎ楽しみ国家泰平となる。雷が轟き渡るような大事変が勃発すると大衆は驚愕して自分を失うが、先祖と神仏をお祀りする祭主(組織のオーナー)の天子(トップ)は神前の料理を掬(すく)う匙(さじ)と香りのよいお酒を決して落とさない。すなわち君子は如何なる事変が勃発しても自分を失うことなく、泰然自若として事変を適切に処理するのである。
《彖伝》
○彖に曰く、震來るとき虩(げき)虩(げき)たりとは、恐れて福を致す也。笑(しよう)言(げん)啞(あく)啞(あく)たりとは、後に則(のり)有る也。震、百里を驚かすとは、遠きを驚かして邇(ちか)きを懼れしむる也。出でては以て宗廟社稷を守り、以て祭主と爲る可き也。
 彖伝は次のように言っている。震爲雷は抑圧されていた陽氣が盛んに活動を始め勢力を拡大伸張する時。陽氣が次から次に発動して、萬物は生々化育する。雷が轟き渡るような大事変が起こった時は、恐れ慎み自ら反省し、正しい道を修めて人德を養い、事変に適切に対処する。恐れ慎み自ら反省するのは、それがよい結果を招くからである。やがて事変が落ち着けば、人々は談笑して和らぎ楽しみ国家泰平となるのは、事変への対処が道理に適(かな)っていたからである。雷が轟き渡るような大事変が勃発すると大衆は驚愕して自分を失う。大事変から遠く離れた地域の人々さえ驚くような事変なので、当該地域の人々は恐れて震え上がるのである。祭主(組織のオーナー)の天子(トップ)は神前の料理を掬う匙と香りのよいお酒を決して落とさない。継承者である皇太子(あらゆる組織の継承者)は如何なる事変が勃発しても自分を失うことなく、泰然自若と事変を処理して宗(そう)廟(びよう)社(しや)稷(しよく)(組織の理念・設立目的)を守り祭主(代表者・トップ)となる。滞りなく事業継承が行われるのである。
《大象伝》
○象に曰く、洊(せん)雷(らい)は震なり。君子以て恐懼し脩(しゆう)省(せい)す。
 大象伝は次のように言っている。雷が次から次に轟き渡るのが震の形である。君子はこの形を省察して、雷が轟き渡る大事変が勃発した時は、恐れ慎み自ら反省し、己を修め養って人德を磨くのである。

震為雷九四(地雷復六四の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九四。震(しん)遂(つい)に泥(なず)む。
 剛健九四は上卦震の主爻(震源)である。本来は雷が轟(とどろ)き渡るような大事変の首謀者となるはずだが、不中正で及び腰のところがあり、しかも上下を陰爻で囲まれている(互体坎の困難の真っ只中な)ので、ずるずると泥の中(陰爻の間)に陥り、奮い立つことができない。泥でできた底なし沼に陥って、身動き一つできないのである。
《小象伝》
○象に曰く、震(しん)遂(つい)に泥(なず)むとは、未だ光(おおい)ならざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九四はずるずると泥の中(陰爻の間)に陥って奮い立つことができない。泥でできた底なし沼に陥って、上卦震の主爻(震源)として本来発揮されるはずの大事変を引き起こす意欲を失ってしまったからである。
(四季と易経 その五)

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