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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 天山遯

三三 天山遯 ||| |・・

遯、亨。小利貞。
□遯(とん)は亨(とお)る。小は貞(ただ)しきに利(よろ)し。
 遯は小人の勢いがだんだん盛んになろうとする時。君子は隠遁して道を全うする。大事は不可。正しい道を守れば、小事は可。
彖曰、遯亨、遯而亨也。剛當位而應、與時行也。小利貞、浸而長也。遯之時義、大矣哉。
□遯は亨るとは、遯(のが)れて而(しか)して亨る也。剛、位に当たりて応じ、時と与(とも)に行う也。小は貞しきに利しとは、浸(ようや)くにして長ずれば也。遯の時義大なる哉(かな)。
 遯の時、君子は隠遁して道を全うする。小人が跋扈(ばつこ)する世の中から隠遁して道を全うするのである。九五と六二は中正にして相応じ、遁(のが)れるべき時は遁れ、遁れるべきでない時は、事を為し遂げる。正しい道を守れば、小事は可。小人の勢いが漸次に盛大になるので、大事は不可。
遯の時に君子が隠遁する…。何と大きな意義があるだろう。
象曰、天下有山遯。君子以遠小人、不惡而嚴。
□天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡(にく)まずして厳(げん)にす。
 乾(天)の下に艮(山)が有るのが遯の形。下から見ると山の頂上は天のように見えるが、山頂に登ると天は遙(はる)か彼方(かなた)に遠ざかる。君子は、小人を悪(にく)まずして自らを律し、その威厳によって小人を遠ざける。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)艮ノ少男世ヲ継ギ、乾ノ老父退隠スルノ時トス、父ハ衰老ニ向テ閑散ヲ樂ミ、少男意ヲ肆ニシテ家事廃頽ニ赴クノ象アリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)艮の少年が後継者となり、乾の老夫が引退する時。父は余生に入りゆったりとした時を楽しみ、少男は意欲をふくらませて暴走する。結果、家運が傾く時である。君子が退いて、小人が進む。理性が後退して、非道に陥り、衰運に向かう。あらゆる活動を止めて、じっと静かにしているしかない。
○君子が見事に隠遁する。今は報われなくても、やがては時を得る。
○宮仕えの人(サラリーマン)は、小人に仕事を邪魔されて、地位を失いかねない時。
○進んで事を為してはならない時である。
○兆しを察して隠遁すれば、災害を免れることができる。
○社会から隠遁する時である。 ○物を投げるという意味もある。

遯 初六 ||| |・・

初六。遯尾。厲。勿用有攸往。
□初六。遯(のが)るるの尾(しりえ)なり。厲(あやう)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに用(もち)ふる勿(なか)れ。
 遯は遁れ退く道を説く。初六は最後尾ゆえ逃げ遅れて置き去りにされた。危うい状況だが、位(くらい)賤(いや)しく非才ゆえ、誰も見向きもしない。今さら遁れ去るよりも、じっと隠れて動かないほうがよい。
象曰、遯尾之厲、不往何災也。
□遯(とん)尾(び)の厲きは、往かずんば何の災あらん也(や)。
 誰も見向きもしない。じっと隠れて動かない。どうして災いを受けようか。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)門地卑クシテ、上ニ齒セラレズ、又他人ニモ容レラレザルノ時ナリ、早ク其衰運ヲ悟リ、能ヲ暗マシ、智ヲ韜ミ、只无事ヲ圖リ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)出自が卑しいので、上位の人を始め、周りの誰からも相手にされない。少しでも早く、自分の衰運を悟り、無事でいることが何よりも大切だと考えて、災難から免れることを優先すべきである。
○戦場(戦いの場)にあっては、一刻も早く退去すべきである。功を上げようとして退去するタイミングが遅れれば大敗する。
○今の場所から退去して、他人から支援してもらう時である。
○一歩たりとも動いてはならない。静かに時を待っていれば、災難を免れることができる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、遯ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、遯の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 遯は天の下に山がある。天はエネルギー(氣)ゆえ上に昇る。山はどんと構えて止まっている。天が上に遁れ去って行くような形である。人に当て嵌めると、小人が時を得て、君子が逃れ去る氣運である。遯は、退き、逃れ、避けることを云う。
 遯の初爻は、逃れるべき時に、逃げ遅れた者、時勢に遅れた者である。つまり、何事もうまくいかず、事を誤る時である。時勢を顧みずに、古風を通そうとして、古風を前面に立てて、社会に打って出ようとすれば、ライバルが現代風を前面に立てて、対抗しようとする。とても勝ち目はない。一刻も早く、逃れ去ることを考えるべきである。対抗しようとすれば、必ず大損失を蒙る。
 以上を「遯(のが)るるの尾(しりえ)なり。厲(あやう)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに用(もち)ふる勿(なか)れ。遯は遁れ退く道を説く。初六は最後尾ゆえ逃げ遅れて置き去りにされた。危うい状況だが、位(くらい)賤(いや)しく非才ゆえ、誰も見向きもしない。今さら遁れ去るよりも、じっと隠れて動かないほうがよい。」と云う。
 智恵と才能を隠して、即刻退却すべきだと、易断した。
(易占の結果は書いてない。)

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