初六 ‥‥‥ ‥‥‥ (坤為地) 之卦 二四地雷復
初六、履霜堅氷至。
○初(しよ)六(りく)。霜を履(ふ)みて堅(けん)氷(ぴよう)至る。
初六は雄(おす)馬(うま)(剛陽のリーダー)に柔順に従う雌(めす)馬(うま)(柔陰の部下)の君子の始まりであるから、どんなに小さな悪事でも見逃してはならない。初(はつ)霜(しも)を履む季節が来れば、やがて堅い氷が張る厳寒の季節が到来するように、小さな悪事(初(はつ)霜(しも))を見逃せば(積小)、やがて大きな悪事(堅(けん)氷(ぴよう))に至る(為大)のである。
象曰、履霜堅氷、陰始凝也。馴致其道、至堅氷也。
○象に曰く、霜を履(ふ)みて堅(けん)氷(ぴよう)とは、陰の始めて凝(こ)る也。其の道を馴(じゆん)致(ち)すれば、堅(けん)氷(ぴよう)に至る也。
小象伝は次のように言っている。初(はつ)霜(しも)を履む季節が来れば、やがて堅い氷が張る厳寒の季節が到来するように、小さな悪事(初(はつ)霜(しも))を見逃せば、やがて大きな悪事(堅(けん)氷(ぴよう))に至るのは、柔順であるべき雌馬(柔陰の部下)に邪(よこしま)な気持ちが芽生え、悪事を重ねて堅(けん)固(ご)になり、終には取り返しがつかなくなるからである。
邪(よこしま)な気持ちに馴れてしまい、小さな悪事を重ね続ければ、初(はつ)霜(しも)が堅(けん)氷(ぴよう)に至るように、やがて大きな悪事に至り、雄(おす)馬(うま)(剛陽のリーダー)に柔順に従う雌(めす)馬(うま)(柔陰の部下)の君子としての資質を失ってしまうのである。
積善之家必有餘慶。積不善之家必有餘殃。臣弑其君、子弑其父。非一朝一夕之故。其所由來者漸矣。由辨之不早辨也。易曰、履霜堅氷至。蓋言順也。
○積善の家には、必ず餘(よ)慶(けい)有り。積不善の家には、必ず餘(よ)殃(おう)有り。臣(しん)其(そ)の君を弑(しい)し、子其(そ)の父を弑(しい)する。一(いつ)朝(ちよう)一(いつ)夕(せき)の故(ゆえ)に非(あら)ず。其の由(よ)って來(きた)る所の者、漸(ぜん)なり。之(これ)を辨(べん)ずること早く辨(べん)ぜざるに由(よ)る也。易に曰く、霜を履(ふ)みで堅(けん)氷(ぴよう)至ると。蓋(けだ)し順を言う也。
先祖代々陰德を積み上げてきた家は、必ずや幸福が子孫にまで及ぶ。先祖代々悪德を重ねてきた家では、必ずや災いが子孫にまで及ぶ。家臣が君主を殺したり、子どもが父親を殺すような、非道な犯罪行為は、一朝一夕に起こるはずがない。小さな悪事を積み重ねて、徐々に大きな悪事に至ったのである。
小さな悪事(初(はつ)霜(しも))を見逃して、つい許してしまったことが、大きな悪事(堅(けん)氷(ぴよう))を招いたのである。早くその非に気が付いて、早い段階で悪の芽を摘んでおけば、大きな悪事には至らなかったのである。初霜が堅(けん)氷(ぴよう)に至るように、やがて大きな悪事に至るとは、小さな悪事を見逃すと、邪(よこしま)な気持ちに馴れてしまい、気が付かないうちに徐々に大きな悪事に至り、終(つい)には災いが子孫にまで及ぶぞと、雄(おす)馬(うま)(剛陽のリーダー)に柔順に従うべき雌(めす)馬(うま)(柔陰の部下)の君子を戒(いまし)めているのである。
【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇善悪の分かれ道に立つ時。善に進めば慶びと幸せを得るが、悪に進めば大きな災いを招く。小さな事が大きな事に発展する時。よくよく戒めなければならない。
六二 ‥‥‥ ‥‥‥ (坤為地) 之卦 七地水師
六二、直方大。不習无不利。
○六(りく)二(じ)、直(ちよく)方(ほう)大(だい)なり。習(なら)わざれども、利(よろ)しからざる无(な)し。
六二は、雄(おす)馬(うま)である乾の根源的な力(元氣)を丸ごと受け容れる(己(おのれ)を虚(むな)しうして全てを受容できる)から、真っ直ぐで、方向正しく、彊(かぎ)りなく大きな力を発揮する。乾の元氣を丸ごと受け容れる六二は、學ばずと雖(いえど)も、全て宜しく事が運ぶのである。
象曰、六二之動、直以方也。不習无不利、地道光也。
○象に曰く、六(りく)二(じ)の動は、直にして以(もつ)て方(ほう)也(なり)。習わざれども利(よろ)しからざる无(な)しは、地(ち)道(どう)光(おお)いなれば也。
小象伝は次のように言っている。六二が動くのは、雄馬である乾の根源的な力(元氣)を丸ごと受け容れる(己(おのれ)を虚(むな)しうして全てを受容できる)。それゆえ、真っ直ぐで、方向正しく、彊(かぎ)りなく大きな力を発揮することができるのだ。全て宜しく事が運ぶのは、六二が柔順中正の陰德を具えて、剛陽に柔順に従う坤の道を大いに発揮するからである。
直其正也。方其義也。君子敬以直内、義以方外。敬義立而德不孤。直方大、不習无不利、則不疑其所行也。
○直(ちよく)は其(そ)の正(せい)也。方(ほう)は其(そ)の義也。君子は敬(けい)以(もつ)て内を直(なお)くし、義以て外を方にす。敬義立ちて德(とく)孤(こ)ならず。直(ちよく)方(ほう)大(だい)、習わざれども利(よろ)しからざる无(な)しとは、則(すなわ)ち其(そ)の行う所を疑わざる也。
六二が、雄馬である乾の根源的な力(元氣)を丸ごと受け容れ、真っ直ぐに進んで行くのは、剛陽に柔順に従う坤の君子として正しい心を有しているからである。また、六二が方向正しく進んで行くのは、剛陽に柔順に従う坤の君子の大義を心得ているからである。雌(めす)馬(うま)である坤の君子は、雄馬である乾の君子を尊敬し、己を虚(むな)しくして素直な心を醸(じよう)成(せい)し、大義に順い、真っ直ぐに進んで行くのである。
六二は人を敬する気持ちを忘れずに、大義に順って事を爲すから、その人德が周りの人から認められて孤立することはない。真っ直ぐに、方向正しく、大きな力を発揮して、未だ學ばずと雖(いえど)も、全て宜しく事が運ぶのである。六二が剛陽に柔順に従う坤の君子としての役割を、髪の毛一本ほども疑うことなく、素直に実行するからである。
【以下、高島易断から占いとしての見立てを引用】
〇正直で嘘がなく、義理堅く人と接する。公平かつ大度量で世に処すべき時。多くの人から信用されて成功しやすい。考えている以上の幸運を得る。運氣盛大ゆえ、この時を逃してはならない。
○人の先生となる兆しがある。 ○沢山の人の上に立つ兆しがある。