ヴェルナーはおなじ年の四月、長崎の金比羅様の祭礼の行事である凧あげを見た。金比羅山の頂上に至る一・六キロの山道は、「ぎっしりと数珠つなぎになった人で一筋の線のようになっていた」。(中略)「…台地は豊かな緑におおわれ、そこに家族連れが休息場所をつくり、持参した弁当を広げていた」。(中略)ヴェルナーは感動した。「ここには詩がある。ここでは叙情詩も牧歌もロマンも、人が望むありとあらゆるものが渾然一体となって調和していた。平和、底抜けの歓喜、さわやかな安らぎの光景が展開されていた」。(P561)
(ヴェルナー「エルベ号館長幕末記」新人物往来社・一九九〇年)
