ポンペ(日本滞在見聞記 雄松堂出版・一九六八年)は長崎の出島に住んでいた五年間(安政四年~文久二年)、「自宅のドアに鍵をかけるなど、まったく念頭にも浮かばなかった」。オリファント(エルギン卿遣日使節録)も使節団宿舎の芝西応寺での経験を次のように語る。「われわれの部屋には錠も鍵もなく、解放されていて、宿舎の近辺に群がっている付添いの人たちは誰でも侵入できる。またわれわれは誰でもほしくなるようなイギリスの珍妙な品をいくつも並べて置く。それでもいまだかつて、まったくとるにたらぬような品物でさえ、何かがなくなったとこぼしたためしがない」。(P159)
モーズ(その日・1 34ページ)は滞日中、たえず財布の入ったポケットを抑えていたり、ベンチに置き忘れた洋傘をあきらめたりしないでいい国に住むしあわせを味わい続けていた。「錠をかけぬ部屋の机の上に、私は小銭を置いたままにするのだが、日本人の子供や召使いは一日に数十回出入りしても、触ってはならぬ物には決して手を触れぬ。私の大外套と春の外套をクリーニングするために持って行った召使いは、間もなくポケットの一つに小銭若干が入っていたのに気がついてそれを持って来たが、また今度は、サンフランシスコの乗合馬車の切符を三枚持って来た」。(P160)
