以上のことから陰は陽に従うべきであり、陰の愚昧な智慧に頼ってはならないことを理性的に悟り、これまでの柔弱で暗闇の状態から脱して知識が明るく智慧に達した大人に従うことが乾に柔順な坤の道であるから、終には進むことによって利益を得ることを図るべきである。このことを「西南に朋(とも)を得るは、乃ち類と行くなり。東北に朋を喪うは、乃ち終(つい)に慶(よろこ)び有るなり」と言う。以上のように己の本分に安んじて常の道を守る。このことを「貞に安んずるの吉」と言う。
思うに、貞の徳は常に守るべきで変わらない。貞の徳により萬物は終わりを全うすることができる。貞の徳を守ることが吉運の所以であり、限りない地の徳に応ずるものである。このことを「貞に安んずるの吉は、地の无(む)疆(きよう)なるに應(おう)ず」と言う。
大体において乾と坤の二つの卦は正反対の性質であることは論ずるまでもない。これを政治に当て嵌めれば、乾の政治と坤の政治は明らかに異なっている。乾の政治のことを彖伝に「雲行き雨施(ほどこ)して」と言い「大(だい)和(わ)を保(ほう)合(ごう)する」と言っているのは、主として天道に則って、仁義道徳を政治の針路となし、最終的に「大(だい)和(わ)を保(ほう)合(ごう)する」政治に至ることを目的とする。
