十一.地天泰 ☷ ☰ 六十四卦中最も安定している時
□泰(たい)は、小(しよう)往(ゆ)き大(だい)來(き)る。吉にして亨る。
上下陰陽大いに交(まじ)わる。何事も調和して幸運を招き寄せる。何をやってもうまく行く。
◎象に曰く、天地交わるは泰なり。后(きみ)以て天地の道を財(ざい)成(せい)し、天地の宜(ぎ)を輔(ほ)相(しよう)し、以(もつ)て民(たみ)を左右(たす)く。☆正(まさ)しく「安泰」の時。何事も通達(通じて達)しないことはない。だが、天の運行(盛運と衰運)は循環する。安泰の時は何時までも続かないので怠ってはならない。
○初九。茅(ちがや)を抜くに茹(じよ)たり。其(そ)の彙(たぐい)を以(もつ)てす。征(ゆ)きて吉。
☆目上の人に目をかけられる。善き仲間を連れて目上の人に仕えれば吉運を招き寄せる。
○九二。荒(こう)を包み、馮(ひよう)河(が)を用い、遐(とお)きを遺(わす)れず、朋(とも)亡(うしな)われ、中(ちゆう)行(こう)に尚(あ)うを得(う)。
☆仁徳ある人が時に中って道を歩む。大衆が帰服する。大事業をやり遂げて尊敬される。
○九三。平(たい)らかにして陂(かたむ)かざる无(な)く、往(ゆ)きて復(かえ)らざる无(な)し。艱(かん)貞(てい)なれば咎无し。恤(うれ)うる勿(なか)れ、其(そ)れ孚(まこと)あれ。食に于(おい)て福(さいわい)有り。 ☆運氣はまだ盛んだが、先行きに暗雲が漂い始める。正しさを貫ければ心配ない。経済的には恵まれている。
○六四。翩(へん)翩(ぺん)たり。富(と)めりとせずして其(そ)の隣を以(もつ)てす。戒(いまし)めずして以(もつ)て孚(まこと)あり。
☆貴方は聖人が遺した言葉をよく学び、よく謙遜して真心溢れる立派な人物である。
○六五。帝(てい)乙(いつ)、妹を帰(とつ)がしむ。以て祉(さいわい)あり。元吉。
☆私利私欲を捨てて虚心になり、謙譲の美徳を大切にする時。大きな吉運を招き寄せる。
○上六。城(しろ)隍(ほり)に復(かえ)る。師(いくさ)を用(もち)ふる勿(なか)れ。邑(ゆう)より命(めい)を告(つ)ぐ。貞(てい)なるも吝(りん)。
☆安泰な時も終わろうとしている。家庭や事業(組織)が傾くような予兆が現れる時。
十二.天地否 ☰ ☷ 六十四卦中最も閉塞・逼迫する時
□之(これ)を否(ふさ)ぐは人に匪(あら)ず。君子の貞(てい)に利(よろ)しからず。大往(ゆ)き小來(きた)る。
上下交わらずに閉塞する。あらゆる事象が閉塞するので人の道に反することが横行する。
◎象に曰く、天地交わらざるは否(ひ)なり。君子以(もつ)て德を儉(つづまやか)にし難(なん)を辟(さ)け榮(えい)するに祿(ろく)を以(もつ)てす可(べ)からず。 ☆小人が跋扈して君子が志を実現できない時。才能を隠して表舞台から退き、不穏な社会に調和するように心がけ、正しい道を守って時を待つしかない。
○初六。茅(ちがや)を抜くに茹(じよ)たり。其(そ)の彙(たぐい)を以(もつ)てす。貞(てい)なれば吉(きつ)にして亨(とお)る。
☆善からぬ集団から誘惑される。道徳を守り本業を大切にする君子と付き合うべきである。
○六二。包(ほう)承(しよう)す。小人は吉。大(たい)人(じん)は否(ふさ)がりて亨る。
☆あなたが小人ならば吉運。あなたが立派な人物(大人)ならば吉運とはならない。
○六三。羞(はじ)を包(つつ)む。 ☆小人が時間を持て余して悪事を働き、自分の罪悪を覆い隠そうとしている。恥を知らない己を反省しなければならない。
○九四。命(めい)有り、咎无し。疇(たぐい)、祉(さいわい)に離(つ)く。
☆九五から命令が下る。君子なら小人あるいは悪党の攻撃を振り切って善い方向に向かう。
○九五。否(ひ)を休む。大人は吉。其(そ)れ亡(そ)びなん、其れ亡びなん、苞(ほう)桑(そう)に繫(つな)がる。
☆貴方に油断や怠りがあると、閉塞状態を脱することはできず、さらに危ない状態に陥る。
○上九。否(ひ)を傾(かたむ)く。先には否(ふさ)がり後(のち)には喜ぶ。
☆これまでには見られなかった新しい動き(衰運から盛運へ転換する兆し)が見えてくる。
