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しらす神々

楽園における農業普及

 修行を終えた「おおくに」の神は、お嫁さんの「すせ」の神と一緒に、楽園の農業普及に取り組み始めた。
 まず最初に取り組んだのは、治水事業を終えた川の直ぐ近くに田圃(たんぼ)を創るための、荒れ地の開墾である。荒れ地には沢山の害虫がおり、時には禽獣も出てきたが、「すさ」の神の訓練で身に付けた方法によって、害虫や禽獣に出て行ってもらい、「すせ」の神と一緒にコツコツ開墾して行った。やがて、「おおくに」の神と「すせ」の神が仲良く荒れ地を開墾していることが楽園の人々に伝わり、沢山の人々が手伝ってくれるようになった。
 やがて、川に沿って広大な荒れ地が整然とした平地になった。次は開墾した広大な平地を田圃として整備する段階に入った。この頃になると、随分沢山の人々が手伝ってくれるようになったので、アッという間に川に沿って広大な田圃が出来上がった。
 ところで、「おおくに」の神はとても優しくて思いやりの心に溢れているので、女性に人気があった。だから、農地開拓を手伝ってくれている周辺の人々のほとんどは女性だった。中には「おおくに」の神の気を引こうとして、色仕掛けで迫ってくる女性もいた。「おおくに」の神は、「すせ」の神をとても大事にしていたので、そのような女性と浮気する気持など毛頭なかったが、どうしようもない男性の性(さが)として、毎日迫ってくる女性に段々心惹かれるようになっていった。
 「おおくに」の神に迫ってくる数多い女性の中でも、次の二人の女性はとても綺麗で魅力的だった。一人は「やか」という名前で、もう一人は「ぬな」という名前だった。「おおくに」の神は生涯を共にする「すせ」の神を裏切るつもりは毛頭なかったが、気が付くと二人の魅力的な女性と付き合っていた。「すせ」の神を裏切ってしまったのである。
 「すせ」の神は「おおくに」の神が浮気していることに薄々気が付いていたので、嫉妬心がメラメラ湧いてきて、「おおくに」の神を独り占めしたいと強く思った。
 ある日、「おおくに」の神が出かけようとしている時、「すせ」の神があまりにも悲しそうにしていたので、「わたしが浮気していることを知って、悲しんでいるのだなぁ」と感じた「おおくに」の神は、次のように詠(うた)った。
 「(やかが好きな)黒い衣を見ても、わたしはさほどときめかない。(ぬなが好きな)青い衣を見ても、わたしはさほどときめかない。やはりわたしは、(すせの神が好きな)茜(あかね)色(いろ)の衣をみると、心が大きくときめく。わたしは、心の底から茜色の衣(すなわち、すせの神)が好きなのだ…」と。
 「すせ」の神は「おおくに」の神が一番好きなのは自分であることがわかって、嬉しくなって、次のように詠った。
 「あなたは男性だから、わたし以外にも、綺麗で魅力的な女性に惹かれるのでしょう。でも、わたしは女性ですから、あなただけしか目に入りません。あなた以外の男性を好きになることなどありえません。どうぞ、わたしの腕の中でゆっくりとお休みください」と。
 そして、「おおくに」の神と「すせ」の神は盃(さかずき)を酌み交わして、幾久しく共に歩んでいくことを誓い合ったのである。以下省略。