しらす神の誕生
途方にくれた「なぎ」の神は、自らの中にある「命の泉」を引き出すために、沐(もく)浴(よく)(禊(みそ)ぎ・祓(はら)い)して心を清めることにした。
水を司る水の神と池を司る池の神に相談して、楽園の中で一番水が綺麗な池を教えてもらった。そして、その池の中にすっぽりと身体を入れて沐浴すると、身体の中に潜んで居た様々な穢(けが)れが次々と体外に排出された。
身体の中がっすっかり清められると、心の中に潜んで居た様々な穢れが次々と体外に排出されて、心身共にすっかり清められたのである。
すると、不思議なことに、自分の内にある「命の泉」からエネルギーが湧き出てきて、左目から「あま」の神が、鼻から「すさ」の神が産まれ出てきた。
「なぎ」の神は、産まれ出てきた「あま」の神と「すさ」の神の姿形を見て心から感動した。これまで、「なみ」の神と二人で協力して産み出してきた神々とは比べものにならないほどオーラを発していたからである。
「あま」の神が発するオーラは、萬物を包み込むような「智慧と慈(いつく)しみの心」に溢れており、「すさ」の神が発するオーラは、萬物を元気づけるような「勇(いさま)ましさ」に溢れていた。このようなオーラを発する神々なら、わたしと「なみ」の神以上の働きをしてくれるだろうと、「なぎ」の神は心の底から安心した。
そして、「あまつ」神から与えられた使命である「地球と宇宙を調和させる」ために、「智慧と慈しみの心」に溢れている「あま」の神に、自分がこれまで行ってきた役割を引き継がせ、「勇ましさ」に溢れている「すさ」の神に、「なみ」の神がこれまで行ってきた役割を引き継がせようと決めた。
「なぎ」の神は自分が首に掛けていた「首飾り」を外して、「あま」の神の首に掛け、これまで自分が行ってきた役割を「あま」の神に託した。その「首飾り」は「思いやり」の象徴である勾(まが)玉(たま)で出来ており、また、「あ」の神が無限に蓄えている「命の根源的なエネルギー」を引き出すための、「いね」の霊力が宿っている。この「いね」の霊力によって、やがて楽園(のちの日本)では、稲作が盛んになり、人間が主なエネルギー源として「お米」を食べるようになるのである。
そして、「なぎ」の神は「あま」の神に、おまえの役割は、わたしの役割を引き継いで、地球を覆っている水の上に浮かんでいる八つの島からなる楽園と自然を司る神々と人間たちを「しらす」ことだと伝えた。
「しらす」とは楽園のことや神々と人間たちのことをよく知って、楽園で暮らしている萬物が幸福になる(調和する)ように祈り続けることである。以下省略。